クリスマスまであと2週間を切ると、街の空気は急にキラキラと輝き始める。クリスマスマーケットの屋台がひしめき合い、薄暗い夕暮れをカラフルな光で満たす。小さな観覧車がハイストリートにどっしりと腰を下ろし、その近くには大きなぬいぐるみが子供たちを誘うように微笑んでいる。
しかし、イギリスの12月の天候はどうにも重苦しい。午後4時前には日が沈み、曇天と霧雨が空を覆う。太陽の温もりを忘れた街は、まるで心に忍び寄る影のようだ。
気づけば、私の心もその重苦しさに引きずられている。鬱々とした感情が心の奥底に沈殿しているようだった。はじめは天気のせいだろうと思った。冬の寒さと曇り空がもたらす一種の季節性の鬱かもしれない。しかし、少し立ち止まって考えてみると、それだけではないように感じた。
問題の根っこにあるのは、自分自身の焦りや苛立ちだった。この季節、子供たちに喜んでもらいたいという思いがいつも私を駆り立てる。何か素敵なプレゼントを買ってあげたい。どこか特別な場所に連れて行って、家族で外食でも楽しみたい。だが現実は厳しい。
2年前、職を失った頃に比べれば状況は良くなった。今はなんとか生活を維持できる程度の収入がある。しかし、それで家族4人を養うというのは、並大抵のことではない。
「もっと安定した収入があれば」と何度も思う。成長する子供たちは次々と新しい欲求を抱き、「これが欲しい、あれも欲しい」と無邪気にせがんでくる。その純粋な声に応えたいと思いつつも、限られた収入の中で何が本当に必要なのかを判断しなければならない。その一つひとつの決断が、私の心を擦り減らしていく。
クリスマスの煌びやかな装飾に囲まれながら、私の心は逆に沈んでいく。どれだけ頑張っても、子供たちに十分な満足を与えられないのではないかという不安がつきまとう。
「自分へのご褒美が欲しい」と思うこともある。けれども、そんな余裕はどこにもない。私の心は、子供たちに少しでも明るい時間を過ごしてもらうことにすべてを注ぐ。
そんな中でふと思う。この生活に光は見えるのだろうか。未来はどうなるのか。確かなことは何一つわからない。
けれども、目の前にある現実に向き合い、少しでも良い方向に向かう努力を続けるしかない。街のクリスマスの光が私の心を完全に照らすことはないかもしれないが、それでもどこかに小さな希望があると信じたい。
今はただ、家族とともに日々を乗り越え、ゆっくりと歩みを進める。そんなクリスマスの季節だ。
文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から751日目を迎えた。(リンク⇨750日目の記事)』
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