無意識という深海――「自分を変える無意識の魔力」とロンドンの午後
- haruukjp
- Apr 14
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ロンドンの空は相変わらず気まぐれで、今日もまた、どこか詩的な鈍色の雲が空一面に広がっている。そんな午後、私はふと静かに自分の内側をのぞいてみたくなった。無意識の底の方へ、まるで井戸の底を覗き込むように。
最近読んだ(というより、動画で解説を観た)バッチ氏の著書『自分を変える無意識の魔力』は、まさにそんな深い井戸のような一冊だった。私たちが気づかないまま頼りにしている“自動運転”のような心の働きに光を当てていく。
無意識の力は、私の中の静かなエンジン
人の意識のうち、顕在意識が占める割合はわずか1%。残りの99%は無意識。これはつまり、私たちは自分の人生のほとんどを「意識していない状態」で生きている、ということになる。
ロンドンでの生活もそうだ。気がつけばバスのルートを暗記し、スーパーでは値段も見ずに同じ野菜を買い、家庭菜園では雑草を引き抜く手順が身体にしみついている。それは、無意識のなせる業だ。
「私は変わりたい」と願うとき、その言葉を発しているのは1%の“意識”にすぎない。けれど、それを実際に動かすのは、99%の“無意識”という巨大な存在なのだ。
無意識を味方にするには、今ここに集中するしかない
無意識は保守的だ。変化を嫌う。私がロンドンでの再出発を試みたとき、もっとも手ごわかったのは、外部の障害ではなく、内なる無意識の「変わらなくてもいいよ」というささやきだった。
その声を乗り越えるには、マインドフルネスの感覚が必要だった。
子どもの弁当を作る朝。湿った土に手を入れる午後の畑。原稿を書きながら飲む冷めかけた紅茶。「今」に集中することで、私の中の無意識は少しずつ方向を変えていったように思う。
そしてそれを助けてくれたのが、シングルタスクという静かな営みだった。複数のことを同時に処理するマルチタスクは、情報を溜めるには便利だが、心を整えるには向いていない。
無意識を整える3つの方法:日々の暮らしの中でできること
1. 不安を解くということ
無職だった頃、私の心にはいつも“見えない煙”のような不安が漂っていた。それは金銭的な不安であり、役割を失った自分の価値に対する疑念だった。
でも不安をただ漠然と抱えていても、前には進めない。バッチ氏は「不安はマインドフルネスの敵だ」と書いている。だから私は、その正体を具体的に言語化し、対話することから始めた。数字を見る。スケジュールを組む。小さくても動いてみる。それだけで、霧が少し晴れることがある。
2. 情報過多を切り離す
今の時代、SNSの通知が鳴らない日はない。でも無意識は、そんな情報の津波に溺れてしまいやすい。
スマートフォンの通知をすべてオフにしたて、代わりに、手帳に書くというアナログな方法に戻るのも必要だ。それだけで思考は整理され、文章にも深さが戻ってきたりする。デジタルデトックスは、意外と効く。
3. 人間関係を選ぶ自由
「誰かの期待に応えるための関係」は、無意識にとって強いストレスになる。義理や遠慮よりも、本当に心が安らぐ相手と過ごす時間。あるいは一人で過ごす静かな時間。それは、無意識をほぐすための、上質な静寂だ。
無意識との共生、それは「自分を整える」こと
このロンドンという街で、私は何度も自分を見失いそうになった。でも、それでも歩いてこられたのは、無意識という“静かな海”と、ちゃんと向き合ってこられたからかもしれない。
私たちは意識で人生を選んでいると思っている。でも実際は、無意識という深海にただようクラゲのような存在かもしれない。ただ、そのクラゲにもう少しだけ、舵を渡せるようになるだけで、人生は案外やさしくなる。
ロンドンの午後、私は今日も畑で土をいじりながら、自分の中の無意識という静かな声に耳をすませている。
文:はる『ロンドン発・アラフィフ父のリスタートライフ』
ロンドン在住、アラフィフ世代の父が綴る、暮らしと学びと再構築の日々。海外での子育て、キャリアの再設計、日常に潜む哲学的な気づき――ただ前を向いて、自分らしい「これから」を丁寧に築くためのライフログです。
家族との暮らしを大切にしながら、自分自身の軸も柔軟にアップデートしていく。その過程で見えてきた気づきや工夫を、同じように変化の中にいる誰かに届けられたらと思っています。ロンドンの空の下から発信中。
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