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砂糖のない生活を目指して——でも、それは思ったよりもずっと難しい

  • Writer: haruukjp
    haruukjp
  • Apr 12
  • 3 min read


ロンドンの空は今日もどこか遠くの記憶のように曇っていて、私はキッチンの窓からぼんやりと外を眺めていた。「砂糖を摂らない生活にしよう」と思い立ったのは、特に劇的なきっかけがあったわけではない。ただ、ある朝、いつものようにコーヒーを淹れながら、ふと「これ以上、無意識に砂糖を身体に入れるのはやめよう」と、そう思っただけだ。

私たちの食生活というものは、驚くほど静かに、しかし確実に構築されている。甘いものを避ければ、それで良いのだと当初は思っていた。チョコレートもケーキも食べない。ジュースも買わない。コーヒーには当然、砂糖を入れない。

「これで砂糖断ちの生活が始まった」と私は思った。だが、現実はそう単純ではなかった。

ある日、何気なく手に取ったライ麦パンの原材料を見て、私は驚いた。そこにはしっかりと「砂糖」の二文字があった。しょっぱいクラッカーにも、トマトソースにも、時には冷凍の野菜ミックスにまで、砂糖は忍び込んでいた。まるで目に見えないスパイのように。

私は気づいた。これは「砂糖を摂らない生活」を目指しているのではなく、「砂糖から逃げる生活」に変わっているのだと。しかも、それは空気のように、気づけば体内に入っている。吸い込むように、無意識のうちに。

現代人の食卓に忍び込む隠れ砂糖の恐ろしさ私たちが日々口にしている加工食品の多くには、味を整えるため、保存性を高めるため、あるいは消費者の「好み」に近づけるために、微量の砂糖が加えられている。パン、ドレッシング、スープ、シリアル、そして「ヘルシー」と銘打たれたスナックでさえ。

「砂糖断ち」はできるのか?生活を見直す第一歩として完全に砂糖を断つことは、現代の都市生活においてはもはや幻想に近いのかもしれない。けれど、それでも「気づく」ことには意味がある。ラベルを見る。食材を選ぶ。自分の体の声に耳を澄ませる。そうした小さな選択が、少しずつ日々を変えていく。

私は今も「砂糖のない生活」を模索し続けている。それはまるで、夜の街を歩いていて、ふと昔好きだった曲がどこからか流れてくるようなものだ。どこか懐かしく、でも、それに引き戻されないように、ゆっくりと距離を取る。

「完璧ではないけれど、誠実な選択を」そんなふうに暮らしていけたらと思っている。


文:はる『ロンドン発・アラフィフ父のリスタートライフ』

ロンドン在住、アラフィフ世代の父が綴る、暮らしと学びと再構築の日々。海外での子育て、キャリアの再設計、日常に潜む哲学的な気づき――ただ前を向いて、自分らしい「これから」を丁寧に築くためのライフログです。

家族との暮らしを大切にしながら、自分自身の軸も柔軟にアップデートしていく。その過程で見えてきた気づきや工夫を、同じように変化の中にいる誰かに届けられたらと思っています。ロンドンの空の下から発信中。


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