ロンドン郊外でゴミを捨てながら、バーミンガムの空を思う
- haruukjp
- Apr 18
- 3 min read

春のロンドンは、街路樹の緑が日に日に濃くなり、通りを歩くたびに季節が少しずつ前へ進んでいることを感じる。そんな穏やかな朝、私は車に庭と家の中の不要なものをぎゅうぎゅうに詰め込み、ロンドン郊外のリサイクルセンターへと向かった。
そこには「再利用・リサイクルセンター」という、非常に便利で整ったゴミ処分場がある。庭ごみや家具、電子機器にDIY廃材まで、実に多種多様なゴミを、区民であれば無料で引き取ってくれる場所だ。最近では利用者の増加に対応するために予約システムも導入され、効率よく処理ができるようになった。
週末の朝にもかかわらず、センターにはすでに長蛇の列ができていた。車から一つずつ物を運び出す人々の表情はどこか軽やかだ。何かを捨てるという行為には、やはり小さな解放感があるのだろう。
ところがその同じイギリスの空の下で、第2の都市バーミンガムではまったく逆の現象が起きている。
バーミンガム市では、ごみ収集作業員たちがストライキを起こし、街中に1万7000トン以上のゴミが放置されているという。これは、単なる一時的な混乱ではなく、2023年に起きた市の財政破綻が背景にある。古くは工業都市として繁栄したこの街も、今では観光とサービス業への転換を余儀なくされ、それでも支えきれない現実がそこにある。
リッチフィールド市が応援に駆けつけたという美談もあるが、政治的な計算が透けて見えるのもまた現実だ。街にゴミが積もるということは、単に見た目の問題ではない。人々の心に静かな苛立ちと不安を積もらせていく。
私は静かに、自分の車のトランクを空にしながら思った。この国では、同じ空を見上げながらも、住んでいる場所によってまったく異なる景色が広がっている。
小さなことを整える暮らしの力
私の暮らすロンドン郊外では、行政が定めたルールのもと、住民がしっかりと自分のゴミを管理している。週に何度かのゴミ収集、そして必要であれば自分でセンターに運び込む。面倒に見えて、この小さな努力が都市の循環を保っているのだ。
子どもたちは最近、庭に落ち葉を集めて「コンポストごっこ」と称して遊んでいる。そんな姿を見ると、環境への意識も次の世代へと自然に引き継がれていくのだろうと思う。
バーミンガムのゴミの山と、ブロムリーの予約制リサイクルセンター。その対比が、妙に心に残った一日だった。
私たちが日々の生活の中で積み重ねている小さなこと――それは、静かで地味で目立たないけれど、社会全体をゆっくりと良い方向へと動かしているように思う。
そして私は今日もまた、庭にしゃがみ込み、土の匂いをかぎながら思う。暮らしの根っこを大切にすること、それがきっと、未来を静かに変えていく一歩なのだと。
文:はる『ロンドン発・アラフィフ父のリスタートライフ』
ロンドン在住、アラフィフ世代の父が綴る、暮らしと学びと再構築の日々。海外での子育て、キャリアの再設計、日常に潜む哲学的な気づき――ただ前を向いて、自分らしい「これから」を丁寧に築くためのライフログです。
家族との暮らしを大切にしながら、自分自身の軸も柔軟にアップデートしていく。その過程で見えてきた気づきや工夫を、同じように変化の中にいる誰かに届けられたらと思っています。ロンドンの空の下から発信中。
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