ラハイナは、かつてハワイ王国の首都だった。歴史の香りが漂う街で、観光客にとっても人気のある場所だった。しかし、そのラハイナが2023年8月8日、山火事で焼け落ちた。約2,200棟の建物が消失し、町の中心は壊滅状態だ。そして、象徴的だったバニヤンツリーも真っ黒に焼かれ、跡形もなくなってしまった。
火災で102人の命が奪われ、住んでいた約1万2,000人もの人々が家を失った。彼らは今、ホテルなどで避難生活を送っている。観光業は深刻な打撃を受け、かつて島を訪れていた観光客は今や半分以下。その影響で、1万人以上が失業したと言う。ハワイにとって観光は命綱のようなものだ。その命綱が、今は細くなってしまった。
山火事の原因は、強いハリケーンの風、干ばつ、そして低湿度などの自然条件によるものだとされている。しかし、それだけではない。送電線が切れて引き起こされた火花や、行政の避難誘導の不備が被害を広げたとも言われている。自然の力と人間のミスが重なり、町を火に包んでしまったのだ。
それでも、ハワイは困難な状況に素早く立ち向かう。火災が起こるや否や、義援金や支援物資が集まり始め、ホノルルの街にはラハイナの復興を願う壁画が描かれた。火災からわずか10カ月、2024年の6月には住宅の再建が始まった。ハワイの人々は、焦げた大地の上に新しい希望を描いている。
ところで、この火災の1ヶ月前にラハイナを訪れていた日本人旅行者の話を聞いた。彼はホノルルの街を歩きながら、ある奇妙な光景に出くわした。茂みの中に、大量の空の財布が捨てられていたのだ。スリが奪った財布を、次々とそこに放り投げたのだろう。同じ手口を繰り返す者たちが、茂みを彼らの「終点」にしていたのかもしれない。大量の空の財布が並んでいる様は、異様で、背筋が寒くなるような光景だったという。
スリは世界中どこにでもいる。それでも、そんなふうに決まった場所に財布が捨てられるほど、規則的に犯行が行われているのを見ると、何か暗い予感を感じずにはいられない。観光地の華やかな表の顔の裏に、そんな現実が潜んでいるのだ。
文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から691日目を迎えた。(リンク⇨690日目の記事)』
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