【イギリス農業と私の小さな畑】──国土70%が農地なのに、なぜGDPは1%未満なのか?
- haruukjp
- Apr 27
- 3 min read

イギリスという国は不思議だ。国土の約70%が農地に使われているにもかかわらず、農業が国内総生産(GDP)に占める割合は、わずか1%にも満たない。風が吹き抜ける広い丘や、羊がのんびりと草を食む牧草地を目にすると、そんな数字が信じられない気がしてくる。
理由はいくつかある。まず、農業は広大な土地を必要とするわりに、工業やサービス業に比べて生み出される「お金」の量が少ない。自動車や金融サービスと違って、トマトやじゃがいもはそれほど高い値段で売れるものではない。それに、機械化が進んだおかげで、ほんの少しの人数で何百ヘクタールもの畑を管理できるようになった。人が少なければ、当然ながら、経済に与えるインパクトも小さくなる。
それでも、農業は生き残っている。イギリスでは、食料安全保障の意味でも、また美しい田園風景を守るためにも、農業は必要不可欠な存在だ。春にはラベンダーが咲き、秋にはリンゴが実る。それはただの経済活動ではない。風景の一部であり、文化の一部であり、暮らしのリズムそのものなのだ。
そんな国の片隅で、私も小さな畑を借りている。家庭菜園と言っても、大げさなものではない。ズッキーニ、ジャガイモ、ラズベリー、ブラックベリー、そしてリンゴや洋梨の木がいくつか。最初は夢中で土を耕し、苗を植え、収穫の喜びを味わった。でも、月日が流れるにつれ、忙しさに追われ、畑は「空いた時間に行く場所」になった。草は伸び、花は咲き乱れ、手入れを怠るとすぐに自然の力に呑み込まれてしまう。
草むしりは正直、苦手だ。夏の終わりに膝をついて、汗をかきながら草を引き抜いていると、何をしているんだろう、と途方に暮れることがある。でも、それでも私はこのスペースが好きだ。ここに来ると、季節の匂いを肌で感じることができる。太陽の角度が少しずつ変わり、土の温度が静かに下がっていく。そんな当たり前のことが、心に小さな灯りをともしてくれる。
イギリスの農業が、たとえGDPの1%にも満たない存在だとしても、それがこの国の豊かさを支えているのだと、私は思う。それと同じように、小さな畑が、私の暮らしに静かな手ざわりを与えてくれている。たとえそれが、誰かの経済指標には全く影響を与えないとしても。
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文:はる『ロンドン発・アラフィフ父のリスタートライフ』
ロンドン在住、アラフィフ世代の父が綴る、暮らしと学びと再構築の日々。海外での子育て、キャリアの再設計、日常に潜む哲学的な気づき――ただ前を向いて、自分らしい「これから」を丁寧に築くためのライフログです。
家族との暮らしを大切にしながら、自分自身の軸も柔軟にアップデートしていく。その過程で見えてきた気づきや工夫を、同じように変化の中にいる誰かに届けられたらと思っています。ロンドンの空の下から発信中。
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