私が会社を辞めてから、あと3日で2年が経つ。40代後半、4人家族。持ち家はあるが、ローンの残りは20年以上。そんな状況で会社員という安定を捨て、個人事業主としての道を選んだ。それは決して容易な選択ではなかったし、結果が保証されているわけでもなかった。でも、今振り返ってみると、その変化には良い面も悪い面もあった。ここで、それらをひとつずつ整理してみたいと思う。
会社員時代の良いところ
安定。それがすべてを支えていた。毎月決まった収入があるというのは、家計にとっても精神的にも計画が立てやすいものだった。定期的に年2~3回の旅行にも行けたし、医療保険に会社を通じて加入していたおかげで、病気になっても私立病院で迅速に診てもらえた。
オフィスの環境も快適だった。冷暖房の効いた部屋で、良く整備されたコンピューターを使い、無料のコーヒーを飲みながら仕事ができる。考えてみれば、なかなか恵まれた環境だったと思う。
会社員時代の悪いところ
だがその一方で、会社員生活には逃れられない負担もあった。残業手当の出ない環境で、週5日の労働に加え、時には週末にも仕事をしなければならない。家族と過ごす時間も心ここにあらずで、頭の中は仕事のことばかり。ストレスの多い業務に向き合わなければならず、その結果、散財してしまい貯金もなかなか増えない。
そして何より、「逃げられない」という感覚が常に付きまとっていた。自分の時間を、誰かに管理されているという感覚だ。
個人事業主としての良いところ
会社を辞めてみて、自由の価値がどれほど大きいかを知った。平日の昼間、何の予定もない時間を自分の好きなように使える。それはちょっとした優越感だ。休みも好きなときに取れるし、上司にあれこれ指示されることもない。自分で考え、自分のペースで動ける。それがもたらす解放感は大きい。
さらに、家族との時間がぐっと増えた。子どもと遊ぶときも、仕事のことを忘れて集中できる。そんな時間が、どれほど貴重だったのかを改めて思い知った。
個人事業主としての悪いところ
もちろん、フリーランスにはフリーランスなりの悩みがある。毎月安定した収入がないということは、生活の基盤が揺らぎやすいということだ。来月の売り上げを心配しながら過ごす日々は、決して楽ではない。また、クライアントとのコミュニケーションには神経を使う。細やかな配慮が求められるからだ。そして何より、自分のやっていることが本当に好きなことなのかを問われ続ける。これは思った以上に重いプレッシャーだ。
2年間を振り返って
過去2年間と、その前の20年を比較してみると、最大の違いはやはりストレスの質だ。会社員時代のストレスは逃げ場のない戦場のようなものだった。一方で、個人事業主のストレスは、自分の選択が引き起こすものだ。どちらが良いとは一概に言えないが、少なくとも私は今、自分で状況を選べるという点で満足している。
収入が減ったことで旅行の頻度は減ったが、ポーランドやチェコ、イングランド国内など、手の届く範囲で旅を楽しんでいる。長期休暇を取ることは難しいが、新しい場所で子どもたちが吸収するものを目の当たりにすると、それはそれで十分だと思える。
新しい目標に向かって
サラリーマン時代の「逃れられない感覚」からは解放された。そして今、私は新しい目標に向かって歩き出している。道は険しいかもしれないが、それでも自分のペースで歩けることに感謝している。
朝の静かな時間、コーヒーを一杯飲みながら、これからの人生について考える。そして、その自由がどれだけの価値を持つかを噛みしめる。自由とは、ただそこにあるだけでは何の意味もない。それをどう使うかが大切なのだ。そして今、私はそれを学びつつある。
文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から727 日目を迎えた。(リンク⇨726日目の記事)』
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