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小学生が受ける「全国試験SATS」の現実と、チョコレートの朝ごはん

  • Writer: haruukjp
    haruukjp
  • May 13
  • 4 min read

イギリスの小学校では、Year 6(日本でいう小学6年生)になると、5月に「SATS(Standard Assessment Tests)」という全国統一の学力テストを受けることになります。このテストは、生徒個人の学力だけでなく、学校全体の評価にも大きな影響を与える重要な試験です。

数学(算数)、英語の読解、文法・句読点、スペリングなどの筆記テストが1週間にわたって行われ、その結果は「標準スコア」として数値化され、保護者や教育機関に共有されます。100が“予想水準達成”の基準とされ、110以上なら優秀とされます。


学校が必死になる理由

学校側としては、生徒たちのSATSスコアが高ければ高いほど、「良い学校」としての評価につながりやすくなります。政府が公開している学校ランキング(通称「リーグテーブル」)にも反映され、保護者たちの関心もそこに向かいがちです。

だからこそ、SATS直前の1週間は、まるで受験ウィークのような緊張感が学校全体に漂います。

そして驚くのは、その「対策」の一つとして提供される朝ごはんの内容です。


朝8時から登校、そしてチョコレート三昧の朝ごはん

我が家の娘が通う小学校でも、SATS期間中は通常より40分早く、朝8時に登校することになりました。そして教室に入る前に、学校から無料で支給される朝ごはんが提供されます。

でもその内容がすごい。

チョコレート味のシリアル、チョコレートソースのパンケーキ、ホットチョコレート…。まるでキッズ向けカフェのメニューのような糖分オンパレード。学校の先生方は、「試験前にエネルギーをつけさせたい」「血糖値を上げて集中力をアップさせたい」という善意と戦略でやっていることは理解できます。

でもその光景を目にしたとき、私は少し複雑な気持ちになりました。


プレッシャーをかけたくない。でも現実は…

もちろん、我が子には「いい点を取れ」とプレッシャーをかけたいわけではありません。むしろ、試験は試験。普段の力が発揮できればそれで十分だし、大事なのはその後の学びや成長だと思っています。

それでも、学校という組織がSATSのスコアを上げようと必死になっている姿を見ると、親としてはその波に飲み込まれないようにするのが難しいと感じます。SATSの成績が良ければ、その子の能力が証明されたように見えるし、逆なら「大丈夫かな?」と心配してしまう。

それだけ、子どもにとっても、親にとっても、大人たちが思う以上にSATSは存在感のあるイベントなのです。


でも、子どもは「チョコレートが楽しみ」

そんな親の思いとは裏腹に、娘はこの特別な一週間を実に楽しそうに迎えています。理由は…「チョコレート朝ごはんが食べられるから」。

試験の日の朝、私が「朝ごはん食べる?」と聞くと、満面の笑みで「いらな〜い!学校でチョコ食べるから♪」と。

その瞬間、私はちょっと笑ってしまいました。そして、少しホッとしたのです。

彼女にとって、この1週間が試練ではなく、“楽しい特別週間”になっているのは、ある意味で救いなのかもしれません。学校側の作戦勝ちでもあるし、子どもの感受性のたくましさでもあります。


学びに必要なのは「安心」と「肯定感」

SATSの結果は大切かもしれません。でも、それ以上に私は「自分の力を信じて、安心して学べる環境」が大事だと思っています。チョコレートでテンションが上がって、少しでもリラックスして試験に向かえるなら、それはそれでいい。

結局のところ、どんなに評価や数値で測られようと、子ども自身が「私は大丈夫」と思える心を育てることが、一番の力になるのだと思います。

来年、また新しいYear 6の子どもたちがこの試練を迎える頃、どこかの学校でもまた、甘くてにぎやかな朝ごはんが出されるのかもしれません。そのときも、誰かの不安な朝が、少しでも笑顔に変わるように——と願っています。


文:はる『ロンドン発・アラフィフ父のリスタートライフ』

ロンドン在住、アラフィフ世代の父が綴る、暮らしと学びと再構築の日々。海外での子育て、キャリアの再設計、日常に潜む哲学的な気づき――ただ前を向いて、自分らしい「これから」を丁寧に築くためのライフログです。

家族との暮らしを大切にしながら、自分自身の軸も柔軟にアップデートしていく。その過程で見えてきた気づきや工夫を、同じように変化の中にいる誰かに届けられたらと思っています。ロンドンの空の下から発信中。


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