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夜の赤ちゃんとルールの話 〜8ヶ月の君と深夜2時のリビングで〜

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子育てに悩むAさんの体験談です。


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リビングには、深夜の静けさが満ちている。

時計の針は2時をまわり、街はとうに眠っている。けれど、うちのリビングだけはまだ灯りが消えない。

8ヶ月になる赤ん坊と私は、静かな映画を観ながら、ソファに並んで座っている。私はカモミールティーを飲み、赤ちゃんは時折あくびをして、それでもまだ目を輝かせている。


それは、なんて幸せな時間だろう。

小さな手、小さなまつげ、小さな笑い声。そのすべてが愛しくて、夜が深くなることさえ忘れてしまう。


でも、ふと我に返ると、ちょっと考え込んでしまう。

こんな時間まで赤ちゃんと起きていて、これで本当にいいんだろうか?と。


私も元々は夜型人間だった。

夜に思考が冴えて、夜に気持ちがゆるんで、夜にこそ自分らしくいられる。

そして夫の帰宅も遅い。だから夕食はどうしても10時を過ぎる。そこから片づけて、お風呂に入って、ふっと一息ついたらもう0時。


それから、やっと赤ちゃんとの遊び時間。

今日も一緒に笑って、話しかけて、抱きしめて。そうしているうちに、2時、3時、時には4時になってしまうこともある。


「でも、昼の12時までしっかり寝てくれたらいいんじゃない?」と私は思っていた。

だって、赤ちゃんだって10時間、12時間、長ければ14時間くらい寝るって聞いたことがある。

だから、夜2時に寝て昼まで寝る。それなら問題ないのではないか? そう思っていた。


だけど、心のどこかで引っかかっていた。

いつかこの子にも「朝起きて、学校へ行く」という日常がやってくる。その時、急にリズムを変えられるのか。

いや、私自身の中にも、どこかで「準備をしておくべきだ」という声が響いていた。





ルールを作れなかった私たちと、ルールを作ることの意味



実は、私自身が「ルールのない子ども時代」を生きてきた。

親は特に厳しくもなく、門限もなければ勉強のルールもなかった。

それがラクで自由で、悪くなかったと思う一方で、私はずっと「何をどう選べばいいのか」が分からなかった。

何をどこまで頑張ればいいのか、いつ休んでいいのか、どこまで甘えていいのか。

判断する力が育たなかった気がしている。


部活ばかりで、家は寝る場所でしかなかった。

だからこそ、親からの「明確な境界線」みたいなものを求めていたのかもしれない。

あの頃の私は、無意識に「誰かに決めてほしい」「守ってほしい」と思っていたのかもしれない。


今、私は母になった。

同じように、私の子どもにも「自由」を与えたい。

でも、それだけでは足りない。


愛しているからこそ、ルールを作らなきゃいけない。

「今は寝る時間だよ」「これはしてはいけないよ」「ごはんはここで食べようね」

そういう毎日の小さなルールが、この子にとっての「安心」になっていく。





ルールは制限ではなく、愛の形



子どもにルールを与えると、嫌われるんじゃないか?と、どこかで思ってしまう。

でもそれは、違う。


本当は逆だ。

ルールがあるから、子どもは「自分が守られている」と感じられる。

境界線があるからこそ、「この世界には信頼できる構造がある」と知ることができる。

そしてその土台の上に、やがて子ども自身の判断力が育っていく。


「親友みたいな親子関係」を目指す人も多いけれど、私は最近思う。

子どもは親に、友達を求めているんじゃない。

自分を見守ってくれる「大きな存在」を必要としているんじゃないかと。


だからこそ、最初の2年がとても大事。

この2年で築かれる親子の信頼関係、日々のリズム、そして生活のルール。

それは、単なるしつけなんかじゃない。子どもの人生の土台だ。


脳の発達にとっても、最初の2年は極めて大切だと言われている。

この時期に安心できる人間関係を築けるかどうかで、その後の感情や社会性に大きく影響が出るという。





だから、今日も2時前には電気を消そうと思う



子育ては難しい。

正解は一つじゃないし、完璧な親なんてきっといない。

私も毎日手探りで、失敗して、反省して、またやってみて、の繰り返し。


でもひとつだけ、最近大切にしていることがある。

それは、「ルールは愛だ」ということ。


子どもを早く寝かせるのも、

一緒にごはんを食べる時間を決めるのも、

テレビの時間を決めるのも、

全部、愛なんだと。


友達ではなく、親として。

甘えるだけじゃなく、導く存在として。


赤ちゃんはまだ言葉を話さないけれど、

私の声やリズムや空気感を、ちゃんと肌で感じ取っている。

だからこそ、今日から少しずつ、我が家のルールを作っていこうと思う。


最初は小さな一歩でいい。

例えば、夜は10時までに部屋を暗くして、静かに過ごすことから。

そして朝の光で自然に目を覚ます習慣を、ゆっくりと育てていく。


愛することと、ルールを与えることは、矛盾しない。

むしろ、それは同じ道の途中にある。




だから、今日も赤ちゃんを抱きしめながら、

深夜2時の映画を少し早めに止めて、

電気を消して、子守唄を歌おうと思う。


これは、私たちの新しい習慣。

そしてきっと、私たちだけの静かな革命の始まり。


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追記:私は現在10代の子どもが2人います。

小さかった頃、愛しさゆえにルールを甘くしてしまったこともありました。

でも今思えば、あの頃にもっと「生活のリズム」や「家庭のルール」を整えていれば良かったと感じています。

ルールは窮屈なものではなく、子どもに安心感を与える優しさでもあると思います。

愛情とルール、そのバランスが本当に大切なんだと、今になって強く感じています。


文:はる『ロンドン発・アラフィフ父のリスタートライフ』

ロンドン在住、アラフィフ世代の父が綴る、暮らしと学びと再構築の日々。海外での子育て、キャリアの再設計、日常に潜む哲学的な気づき――ただ前を向いて、自分らしい「これから」を丁寧に築くためのライフログです。

家族との暮らしを大切にしながら、自分自身の軸も柔軟にアップデートしていく。その過程で見えてきた気づきや工夫を、同じように変化の中にいる誰かに届けられたらと思っています。ロンドンの空の下から発信中。




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