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孫が犬を残しこの世を去る 今日を生きる96歳 誕生日を迎える

Writer's picture: haruukjpharuukjp


人生の出会いは、時に意外な場所でそっと始まるものだ。

私がまだ週60時間もの仕事に追われていたサラリーマン時代、日常は会社と家との単調な往復で満ちていた。週末には疲れ果て、身体を休めるだけで精一杯。新しい人々と知り合う余裕など、どこにもなかった。

だが、会社を辞め、目の前の生活に目を向けるようになってから、少しずつ世界が変わり始めた。近所付き合いを深めたり、子どもの学校の父兄たちと会話を交わしたり、ロンドンに住む旧友たちと連絡を取るようになった。その2年の間に、私は人と人との繋がりが生み出す静かな喜びを改めて学んだ。

96歳の誕生日

そんな中で出会ったのが、今日96歳の誕生日を迎えたイギリス人女性だ。彼女は一人暮らしをしているが、私が散歩の相手をしている犬の飼い主でもある。とはいえ、彼女自身が犬を連れて散歩をするのは難しい。足腰はそれほど強くなく、元気な犬に引っ張られて歩けるほどの体力はない。それでも意識はしっかりしていて、会話の端々に知的な輝きが垣間見える。

今日はその彼女の誕生日だった。花束と手書きの誕生日カードを用意し、家族全員で感謝の気持ちを伝えた。「あなたと犬に出会えたことに感謝しています」と添えたメッセージに、彼女は目を潤ませながら喜んでくれた。

犬と彼女、そしてその背景

話をする中で、彼女の人生の一部が少しずつ見えてきた。息子さんは今日訪問する予定だったが、風邪をひいてしまいキャンセルになったらしい。さらに、お孫さんは4年前に自らこの世を去ったという悲しい過去を抱えていた。その頃、お孫さんにプレゼントするために飼った犬が、今は彼女の家族になっている。

その犬との生活が、私と彼女が出会うきっかけになった。何気なく始まったこの繋がりが、少しずつ深まり、今日という特別な日に小さな喜びをもたらすことになった。

一人の誕生日

花束を抱えた彼女は、その日一日をとても嬉しそうに過ごしてくれた。誕生日を一人で迎えるのはどこか寂しさを伴うものだろうが、誰かの存在がその日を少しだけ温かいものに変えることができるのだと感じた。

犬が繋いだこの出会い。犬を散歩に連れて行きながら、彼女の話を聞き、そして彼女の96年の人生のほんの一部を共有する。そんな時間が私にとっても心地よいものになっている。

出会いは、時に予想もしない形で私たちに訪れる。そしてその出会いが、私たちの日常を少しずつ変えていくのだと思う。


文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から789日目を迎えた。(リンク⇨788日目の記事)』


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