ロンドンに初めて来る人からよく聞かれる質問がある。「ロンドンの冬って寒いんですか?雪は降りますか?」と。まるでその答えが旅の幸福度を左右するかのように。
私の答えは決まってこうだ。
「氷点下になることはほとんどありません。雪もほとんど降りません。今年なんて一度も見ていないです。」
そしてその言葉は、ここ数年のロンドンの冬を反映した真実でもある。2024年に入ってからというもの、一度も雪を見ることはなかったし、2023年の冬も11月、12月と雪景色に彩られることはなかった。
ところが、今日——2024年11月19日、ロンドンに雪が降った。気温は3度。冷たい空気の中、木々はまだ紅葉の名残を纏い、枯葉がゆっくりと舞い落ちている。街中を歩けば、濡れた歩道の上に薄い雪がほんの少し積もっているかのような錯覚を覚えるけれど、実際には地面はその湿り気をただ受け入れるだけだ。
郊外に行けば、もう少し季節の移り変わりを感じられる。紅葉が息を引き取る前の最後の輝きを見せている。
今週の天気予報を見れば、北イングランドでは雪が積もる可能性があるという話も聞くが、ロンドンでそれを期待するのは少し無理があるかもしれない。今日の雪も、私がこの記事を書いている間に雨へと変わってしまった。積もるほどの雪ではない、ほんの一瞬の白い軌跡。ただそれだけだ。
子どもたちはがっかりするだろう。「積もる雪が見たい」と願う彼らにとって、この淡い降雪はあまりに物足りない。
でも、私は思う。この街には、積もらない雪が似合っている。地面を覆い尽くすこともなく、ただ空を漂い、濡れたアスファルトの上で消えていく。そんな控えめな雪が、この街の冬の静けさに溶け込んでいるように感じられるのだ。
さて、11月も下旬に差し掛かり、寒さはこれから本格化する。今週は氷点下まで冷え込む日もあるらしい。外に出るときはコートを忘れず、心も少し温めておくといい。雪が降るかどうかは分からない。でも、降ったら降ったで、それを特別なものとして楽しむ。それがロンドンの冬と上手に付き合うコツなのかもしれない。
文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から728 日目を迎えた。(リンク⇨727日目の記事)』
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