
3月に入った途端、空はまるで新しい月を祝うかのように晴れ渡った。イングランド南部では、快晴の日々が続いている。予報によれば、今のところ5日連続で日照時間は8時間を超えるらしい。朝6時40分に太陽が昇り、夕方5時45分に沈む。つまり、ほぼ一日中、太陽を拝める計算になる。
2月の総日照時間を、わずか数日で追い越しそうな勢いだ。
ここまで晴れると、地元の人々は少し不安になる。これは、いかにも「イギリスらしくない」天気だからだ。
ロンドンには、春休みを利用して訪れた学生や観光客があふれている。そして彼らは驚く。「イギリスって、こんなに天気がいいんだ」と。だが、もちろんそんなはずはない。彼らは知らないのだ。2月のどんよりとした雲のことを。灰色の空が一日中広がり、太陽をまともに見ることすらなかった、あの冬のことを。
2月は、本当に苦しい時期だった。空は重く、気分も沈む。だが、3月に入り、まるで早めの春が訪れたかのように街が息を吹き返している。冬眠から覚めたばかりの子グマのように、人々は活気に満ちている。
とはいえ、これはイギリスの本当の姿ではない。だから観光客は戸惑う。「まるでアメリカ西海岸のようだ」と口にする者もいる。
だが、現地の人々はこの貴重な晴天を無駄にはしない。気温はせいぜい10度前後。それでも芝生の上に座り込み、ピクニックを楽しみながら太陽を存分に浴びている。その姿は、まるで短い幸福を手のひらにそっと乗せるようだ。いつ消えるか分からないからこそ、人々はこの陽射しを惜しみなく受け取るのだ。
文:はる『ロンドンでの失職、生き残りを綴ったブログ。小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。転身開始から826日目を迎えた。(リンク⇨825日目の記事)』
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