【4年ぶりの帰国】ヒースローから日本へ——心に満ちた「ただいま」の瞬間
- haruukjp
- May 18
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今回、4年ぶりに日本へ帰る機会を得ました。日本で暮らす家族や友人には、もちろん会いたい気持ちは常にありましたが、日々の忙しさや世界の情勢もあり、なかなか実現できなかった4年間。そして今、ようやくその日が来たのです。
ヒースロー空港から搭乗したのは、定員350名ほどの大型機。私の周りはほとんどがイギリス人、あるいはヨーロッパからの観光客で、日本人らしい姿はほんのわずか。全体の1割にも満たない印象でした。
それでも不思議と心は静かで、焦りも不安もありませんでした。どこかで「この中で自分だけが"帰国"なのだ」という感覚があったからかもしれません。私にとってこのフライトは、旅ではなく「帰る」という実感に満ちたものだったのです。
飛行機の中で見えた、もう一つの日本
飛行機が離陸し、長いフライトが始まると、機内の空気にも変化が訪れます。ロンドンから東京まで、約14時間の空の旅。隣席の乗客が小さな声で「ありがとう」「すみません」と、日本語のフレーズを繰り返して練習しているのが聞こえてきました。日本人ではない人たちが、これから訪れる国に敬意を持ち、静かに準備している姿。その表情は穏やかで、どこか誇らしげでもありました。
旅慣れている人たちであっても、「日本へ行く」というだけで特別な思いがあるのだと伝わってきます。秩序、礼儀、静けさ、美しさ——。彼らが思い描く日本の姿を、自分は当たり前のように背負っているのかもしれない。そう思ったとき、私は静かに背筋を伸ばしました。
窓の外に広がる故郷の空
飛行機が日本の上空に入る頃、ふと窓の外を見ると、朝の光が雲をやわらかく照らしていました。見慣れた風景ではないのに、心はどこか懐かしさでいっぱいになる。言葉にならない感情が胸に満ちていきます。
「自分は、日本人なんだ」と、久しぶりに強く意識した瞬間でもありました。
パスポートに「JAPAN」と書かれていること、それは普段、ただの形式でしかなかったかもしれません。でもこのとき、飛行機という異国の空間の中で、周囲の多国籍な旅人たちに囲まれながら、自分が「帰る場所を持つ」という事実が、何よりもあたたかく、誇らしいものに思えたのです。
あと何回、日本に帰れるのだろう
飛行機が無事に着陸し、「ただいま」という気持ちがじわじわと湧き上がってきたとき、ふと、こんな思いもよぎりました。
あと何年、日本に帰れるだろうか。あと何回、この気持ちを味わえるのだろうか。
4年ぶりの帰国がこんなにも感動的だったからこそ、次の機会がいつ来るのか、わからないという現実もまた胸に残ります。家族と過ごせる時間、街の風景、店先の匂い、言葉を交わす小さな瞬間。そのすべてを、しっかりと目に焼き付けておきたい。そう思いながら、日本の空気を深く吸い込みました。
「帰る場所」があるということ
海外で暮らしていると、日々の生活の中で、自分の「根っこ」が揺らぐ瞬間があります。でも、こうして日本に戻ると、自分の輪郭がはっきりするような気がするのです。言葉も文化も空気も、自分の一部として戻ってくる。
飛行機の中で交わしたちょっとした会話、降り立った空港で聞こえた日本語、コンビニのドアが開く音。すべてが「自分は日本人だ」と思わせてくれる証です。
何年経っても、何度目でも、この「ただいま」という感覚は、きっと変わらない——そう信じたいと思います。
今回の帰国で改めて感じたのは、「帰れる場所」があるというのは、とても強く、優しいことだということ。もしあなたが同じように海外で暮らし、次の帰国を夢見ているなら、その日が来たとき、心の中にある日本をそっと抱きしめてあげてください。
それが、私たちが遠くにいても、日本人であり続けられる理由なのかもしれません。
文:はる『ロンドン発・アラフィフ父のリスタートライフ』
ロンドン在住、アラフィフ世代の父が綴る、暮らしと学びと再構築の日々。海外での子育て、キャリアの再設計、日常に潜む哲学的な気づき――ただ前を向いて、自分らしい「これから」を丁寧に築くためのライフログです。
家族との暮らしを大切にしながら、自分自身の軸も柔軟にアップデートしていく。その過程で見えてきた気づきや工夫を、同じように変化の中にいる誰かに届けられたらと思っています。ロンドンの空の下から発信中。
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