イギリスで個人事業主として働く:受託会社との厳しい現実とその対処法
- haruukjp
- May 6
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Updated: May 9

私は現在、イギリスで個人事業主(self-employed)として働いています。自由な働き方や自分の裁量で仕事ができる点に惹かれてこの道を選びましたが、実際には「自由」とは名ばかりで、受託会社との関係において数々の理不尽な状況に直面してきました。
今回は、私自身の経験に加え、日本語のYouTube動画で解説されていた「業務委託契約と社員の違い」や、偽装請負・偽装フリーランスのリスクについて整理しつつ、イギリスという環境におけるリアルな現状をお伝えします。
業務委託と社員の決定的な違い
まず押さえておきたいのは、「業務委託契約」は「雇用契約」とは根本的に異なるという点です。
雇用契約:会社の指揮命令下にあり、就業時間や働き方は会社のルールに従う。福利厚生や社会保険も提供される。
業務委託契約:企業との「取引関係」であり、基本的には成果物に対して報酬を得る形式。業務の進め方やスケジュールは自由であるはず。
しかし、現実にはこの「線引き」が非常に曖昧にされており、まるで社員のように扱われるケースが横行しています。
受託会社の酷い実態 ― 私の経験から
1. 指揮命令の強制と時間拘束
私がある受託会社と契約した際、最初は「業務委託だから自由にやっていい」と言われました。しかし、蓋を開けてみると、マニュアルを渡され、その通り作業することを指定されました。さらに、「事後報告書」と称して、毎回のようにレポート提出が義務付けられました。
これはもう、ほぼ社員と変わらない働き方です。にもかかわらず、会社は私に社会保険や福利厚生の提供を一切せず、「外注だから自己責任で」と突き放すのです。
2. 責任の押しつけと契約解除の横暴
あるとき、業務で小さなミスがあって、修理に費用がかかった際、受託会社の担当者から「君の責任だ」と厳しく追及されました。社員であればチームとしてフォローしてもらえることも、業務委託ではすべて自己責任。しかも、その一件で「信用できないから契約終了」と、一方的に打ち切られてしまいました。
社員であれば解雇には法的な手続きが必要ですが、業務委託は契約さえ切れば終わり。あまりに一方的で不条理でした。
3. 名刺に会社名? それはもう偽装です
受託会社から「当社の担当者として名刺を持っておいてくれる?」と頼まれたことがあります。一見、信用のための工夫にも見えますが、これは明らかに業務委託の範囲を逸脱しています。会社名・肩書きが入った名刺を使えば、外部からは「社員」として見られ、責任や期待も社員並みにされるのです。
偽装フリーランスのリスク
YouTube動画でも語られていたように、業務委託を装って実態は社員同様に働かせる「偽装フリーランス(Disguised Employment)」は、企業にとっては都合の良い搾取の手段です。
労災保険が適用されず、事故時に補償がない
社会保険料の会社負担が発生しない
解雇リスクなしで、簡単に契約解除できる
給与ではなく報酬として扱うため、税務上の負担も軽減される
私自身、契約書には「遂行を請け負う業務委託」と記載されていたにもかかわらず、実際には当日に逐一リアルタイムで指示を受け、「お客様対応方法」や「アレンジの効いたサービス」で評価されるなど、実質的には社員と同じような管理下で働かされていました。
注意すべき3つのポイント
社員のような扱いを受けていないか、常にチェック
毎日決まった時間で勤務を強要されていないか?
指示系統が会社の上司に従属していないか?
契約書の精査と事前確認
成果物の定義、報酬、納期、責任範囲など、曖昧な箇所は必ず確認・交渉しましょう。
曖昧な表現(例:「必要に応じて対応」)はトラブルのもとです。
会社名・肩書き入りの名刺は持たない
一見便利に見えても、法的には非常に危険。労働者性があると見なされる可能性があります。
イギリスにおける制度的な背景
イギリスでは、個人事業主、パートナーシップ、Ltd(法人)などの形態があり、それぞれ異なる税制・責任・保障があります。私のような「sole trader(個人事業主)」は、基本的に税務処理や保険加入もすべて自己責任です。
一方、イギリスにも「IR35」という規制があり、業務委託契約の実態が雇用と変わらない場合、法人(会社)に対して税務的な再分類(=雇用として扱う)がなされる可能性があります。これはまさに偽装請負を防ぐための法律で、日本と似た問題意識が根底にあります。
私なりの対処法と今後の戦略
契約は必ず事前に弁護士かプロのチェックを受ける
「自由度が高い業務」だけを選び、日報・常駐型業務は避ける
収入源を複数化し、1社依存の状態を回避
不当に契約解除された場合、書面を保管し、法的措置も視野に入れる
終わりに:自由には責任が伴う、だが搾取は受け入れない
個人事業主である以上、自分の行動と選択に責任を持つのは当然です。しかし、それが「企業による搾取の口実」になるのは絶対に許されるべきではありません。形式上は「フリー」でも、実態は「拘束される労働者」では、何のためにこの働き方を選んだのか分かりません。
今後も、自分の権利を守りつつ、真に自由でフェアな働き方を実現できるよう、引き続き声を上げていきたいと思います。
文:はる『ロンドン発・アラフィフ父のリスタートライフ』
ロンドン在住、アラフィフ世代の父が綴る、暮らしと学びと再構築の日々。海外での子育て、キャリアの再設計、日常に潜む哲学的な気づき――ただ前を向いて、自分らしい「これから」を丁寧に築くためのライフログです。
家族との暮らしを大切にしながら、自分自身の軸も柔軟にアップデートしていく。その過程で見えてきた気づきや工夫を、同じように変化の中にいる誰かに届けられたらと思っています。ロンドンの空の下から発信中。
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