あるイギリス人家族の話。
母親が、屋根についている汚れを掃除しようと梯子で登っていた。梯子は2段階に伸びるタイプのもので、伸ばすと金具で止めて固定するようになっている。
彼女がてっぺんまで登った時のことである、その金具が外れ、地面に落ちたのである。高さであったら3m近く。激痛で大声を出す彼女、それを聞いて旦那は救急車を呼んだ。
20分で救急車は到着。命に別状はなく、2時間の応急処置の結果、大学病院へと運ばれることが決まった。
検査の結果、落下時に梯子が胸に刺さり、胸の骨を、そして落下時に背骨の一部を骨折ということがわかった。その場にいた旦那と娘は救急車に付き添って病院まで同伴してその日は夜遅くまで病院で過ごした。
この家族にはもう一人メンバーがいて、息子である。その息子はたまたまその日、20歳の誕生日を祝うために友人と海外に出かけていた。
その息子は、両親がこの日楽しみにしていたパーティーに出かけたと思い、テキストでメッセージを送ってきた。
「お父さん、お母さん、パーティーはどうだい?天気も良さそうだし、楽しそうだね。こっちも楽しくやってるよ!」
それに対して、病院の待合室でこのテキストを返事した父親は
「こっちは盛り上がってるよ、お前も楽しんでね」
20歳の誕生日を祝う息子に心配かけてその楽しい時間を邪魔してはいけないし、母親は命には別状がないから、とりあえず今は知らせないでおこうと気を遣って嘘をついたのである。
ついていい嘘。
父親の懸命な判断で息子の記念となる日は悲報に悩まされることなく無事終了したのである。
息子が帰ってきて、家族が母の事故をすぐに知らせなかったことに怒るかもしれないが、彼は、自分がその瞬間を楽しめた重要さを理解することだろう。
(終)
〜はる〜
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