小学生と中学生の子供を持つアラフィフサラリーマンが、ロンドンで長年働いた会社からいきなり(当日)の解雇通告を受け、その瞬間からオフィスにも戻れず退職。フリーランスで僅かな食費を稼ぐも、その後の就職活動が難航中。無職生活662日目を迎えた。(リンク⇨661日目の記事)
駐在員という言葉を聞くと、かつては日本の本社から派遣されて海外の支店で経験を積み、帰国後は「海外勤務経験者」として出世が少し早まる、そんな特権を持った存在が思い浮かぶ。けれど、現実はいつもそんなにシンプルではない。
駐在員になる道は大きく分けて二つある。一つは、若手のホープとして「腕を磨け」と送り出されるケースだ。もう一つは、日本での居場所を失った中堅社員が、半ば強制的に「海外で我慢してくれ」と送り出されるケースだ。後者の場合、昇進は期待できず、ただし異動先で大きな波風を立てなければ良しとされる。どちらのパターンでも、駐在というラベルが輝くものばかりではない。
若手のホープとして海外に送られることは一見華やかに見えるが、実際にはそうでもない場合がある。たとえば「トレーニー」として赴任すると、上司の飲み会のセッティングや雑務に忙殺され、残業代も出ずに居残りを強いられることもある。腕を磨くどころか、むしろ精神をすり減らすだけの毎日になることも少なくない。
さらに興味深いのは、独身で海外赴任が決まると急いでお見合いをして、出発直前に結婚してから赴任する人たちだ。昔は単身での海外赴任が少なく、家族持ちを送り出すことが一般的だった。理由は単純で、会社が「駐在員が遊んでしまわないように」という防衛策だったからだ。しかし、家族を伴うことが必ずしも順風満帆な結果をもたらすわけではなく、複雑な家庭事情を抱えることもある。
一方で、ワーキングホリデーでイギリスに来る人たちの中には、単身赴任の駐在員をターゲットに合コンに参加する者もいる。彼らにとって、駐在員と結婚して「駐妻」になることは、ある種の夢のようなものだ。特に、20代のうちにカナダ、イギリス、オーストラリアを渡り歩くような人にとって、これは逃したくないチャンスだ。逆に、駐在員がそういったワーキングホリデーの人たちを軽く扱い、トラブルを引き起こすこともある。
駐在員の行き先も、もちろん重要な要素だ。需要が高く、ビジネスの最前線に立てる地域に赴任できれば、それは貴重な経験となる。しかし、マーケットが小さく、忙しくない地域に送られてしまうと、日々の業務は退屈で、キャリアにおいても大きな糧とはならない。
そして、時代は変わった。かつてのように「海外勤務」が特別視される時代は終わりつつある。インターネットとオンライン会議の普及で、物理的にどこにいるかがそれほど重要ではなくなってきた。外国語が話せるだけでは、もはやそれほどのアドバンテージにはならない。
それでも駐在員に価値があるとすれば、それは現地の人々との交渉力や、ビジネスを直接的に推進する力だろう。パワーポイントを作ったり、会議の準備をする仕事はAIに任せればいい。大事なのは、現地の文化やビジネス慣習を理解し、人間関係を築き上げ、自分自身で契約を結ぶ力を持つことだ。もしそれができれば、駐在員としての存在意義は確固たるものとなるだろう。
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